- 2008-07-02 (水) 0:01
「面白くない」
さっきからぶつぶつと生徒会長がつぶやいている。呟くだけならいい、勿論よくはないが不快指数を高めているのは、椅子をカタカタとさせる音とせわしないつま先のキック音。
長い前髪もある程度の美形だから許されるのか、不潔感はない。極度の近視のためメガネは厚い。メガネをかけているときとはずしたときがまるで別人なのは歪曲した空間のせいで瞳の大きさが違うからかもしれない。
会長は長い前髪をいじりながらトラックポイントをいじりながら、まだ呟きと床のキックをやめない。
つまるところ何もおもしろくないのだと会長に私は何度も進言しているが聞く耳を持たない。
「面白くない」
カタカタとキーボードを打つと、OSの終了音が聞こえた。
私は顔を上げて会長をみる。
会長は私をじっとみていた。
「キミ、何か面白いことを提案してみてはどうだろう?」
私を見つめながらつまらなさそうに呟く会長は、本気だった。
「五つ数える、その間に・・・」
私は鞄をがっとつかんで生徒会室の扉を勢いよく開けると廊下を駆け出した。
同じようなことが前にも何度もあった。そのたびに会長はそのきれいな顔からは想像も出来ないようなまがまがしい顔つきになり、数え終わると同時に私の両手をつかんで(どうやっているのかはわからない)ブラジャーのホックを外し、キスをした。
いやがればいやがるほどに楽しそうに会長は『面白くないな』と、といって唇を奪う。
「君は僕が好きだから、いやなはずがない」
「だけれども、僕は君が拒んでくれることを願っている。そうではなくてはおもしろみがないからだ」
会長はそういった。
『この人は絶対にろくな人間にならない』と私は思ったが、すぐに腕を放されるのでほっと安堵してブラジャーのホックをしめる(もしかしたら少し喜んでいる部分がないとはいえないかもしれない)。
私が一心不乱に走っていると、一回の出口が見えた。
三階の端にある生徒会室から校舎の出口までは距離があり、運動が苦手な私にすぐに息を切らせる。
やっとの事で出口を出て、安心した気持ちで生徒会室の教室を見る。
開いた窓からカーテンが揺れている。
気持ちの良い初夏の風景だった。
私はすがすがしい気持ちで振り返ると、会長がいた。
「やれば出来るじゃないか」
会長は私を湯klくりと抱きしめると耳元でささやいた。
「スリリングだったよ。なかなか面白い」
私はもうどうでもいいや、という気持ちで快調に身を預ける。
が、コンマ数秒後に私はリノリウム張りの床とキスすることになった。
「会長!」
恥ずかしさと、なんだかわからない悔しさで、私は叫んだ。
「いやいや、ゴメン」
アハハ、と会長は笑っている。
「笑わないでください、・・・私だって、ちょっとは真剣なんですよ!頭が回るからって、ヒトで遊ぶのは大概にしてください」
会長は転んだままの格好になっている私に手をさしのべた。
「悪かった」
私はその逆光になった。会長の手を取ろうと腕を伸ばした。
着信音が鳴った。
私の手が快調に触れる、というその時に会長は手を自分の胸ポケットに引っ込め、電話を取った。
私は、こけた。
「何?」会長は何事もなかったかのように電話に出ているのだろう「あー?いま?大丈夫だよ。助手がちょっとへまをしただけだから」会長の声が聞こえる。
私は、なぜ自分が今こんな状況になっているのか、あたまを抱えた。
「え?大丈夫だよ、へまと言ってもね、自分で勝手にこけただけだから」アハハ、という声が聞こえる。
「会長のせいですよ」
私は赤い顔だっただろう。
力なく呟いた。
通話を終了すると、へたり込んだままの私と同じ目線に会長は腰を落としてくれた。
「いつまでその態勢でいる」
やれやれといった感じで、会長が私に話しかける。
「悪かった。機嫌を直してくれ。僕には君しかいないんだ」
「え?」
「僕には君しかいないんだ。だから機嫌を直してくれ」
あまりの急展開さに私がもじもじとしていると、会長は続けた。
「僕がこんなだから副会長の立候補者が君しかいないんだ。頼むよ『副会長』」
会長は私の手を取り、スカートの埃を払ってくれた。
「これからも、面白いことを探すため、我が生徒会は日夜活動を続けるぞ」
私は、心の中だけで突っ込みを入れた。
『楽しいのは君だけだろう・・・』
「はい」
力なく頷くことしか私には出来なかった。
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