- 2009-07-19 (日) 16:28
私がメグリヌリンメイと話す機会が持てたのは、完全なラッキーだった。
メグリヌは大量殺人鬼で、殺人兵器だった。
どのような嘘をもってしても彼のしたことを真似できる人間はこの世の中に存在しないだろう。
そして彼自身がそれは出来ないと断言している。
殺人兵器でなくなった彼を警察は捕まえた。
捕まえた当初は、自分で歩くことも出来ないような状態だったらしい。
そんなメグリヌはこのように延々と話すことが出来るところまで回復したらしい。
これは私が死んでしまう前の文章だ。
私は死んでしまった。
私は、影によって殺された。
私は発狂して、その発狂加減は、どのようなものだったのか、私自身わからないが、死んだ。
どうやら自殺だったらしいことはなんとなく自分でもわかった。
しかし死ぬことは怖くなかった、影に殺されてしまった私は、もう影におびえることもなく、このようにして経験をつむぐことが出来る。
どこにつむいでいるのか?
それよりも、私はメグリヌと言う男性と対峙し、彼が話し終わるのを待ったことがあった。
メグリヌの話の内容は冗長で、そして無意味だった。そんなメグリヌも、今回の一連の事件の被害者とも言えるのだろう。だが、彼は生きていて、彼が殺してしまった人たちはもう生きていないということを考えるとメグリヌを糾弾せずにはいられないだろう。
彼が彼のことを自分ではないといくら主張したところで、その身体はメグリヌ以外の誰のものでもなく、その精神はやはりメグリヌ以外の何かが入る余地はないのだから。
だから客観的に見て彼は完全な殺人者なのだ。まがうところなく、一寸の余地もなく、彼は犯罪者なのだ。
そして私も彼は犯罪者なのだと思う。
我思う ゆえに 我在り
だったか?そんな言葉があったと思うが、しかしそれを照らし合わせるとメグリヌは『我ではなかった』もしくは『我ではない』とも取れる可能性がないわけではない。
私がメグリヌと話せたのはラッキーだったと書いたが、本当はそんなことはない。
総合病院の込み合った待合室で自分の名前が呼ばれるのを待っている間、看護士たちが一枚のカルテをせわしなく取り合っているのが見えた。
ちらりと見えたそのクランケの名前が廻濡燐命であった。
その難しい漢字を読み取るよりも病室名を盗み読むのは難しくなかった。
そのまま私は自分の名前が呼ばれるかも知れないタイミングを逸してでも廻濡燐命にあいたいと思った。
そもそも一般病院にいるということを考えたこともなかった。
なるほど、運命とはめぐり合わせだと、誰かが言っていた。
死ぬ前の私はそんなふうにして気軽に待合室を出たのだ。
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